Q:15回目を迎えた今回の夜会は?
A:気分も新たに、というところでしょうか。
15回という区切りというわけじゃないんですけど、
会場も変わることですし
内容も真正面から“和”ですからね。
元々「夜会」は非常にジャンルが分からないところで
始まってるんですが、今回、音楽劇に立ち返ろうと。
台詞と台詞の合間に曲を入れ込んでゆくというよりは
曲から曲へ、歌詞で繋いでゆくという形なんですね。
音楽の中にストーリーが全部入っている。
方向としてはミュージカルというよりオペラでしょうね。
だもんですから、今回は、曲、多いよ(笑)
今回、普段使わない言葉が沢山入っているんで、
1回ご覧になっただけじゃ
聞き取れないところもあるかもしれませんが、
曲のアップダウンも激しいし、
ジェットコースタームービーみたいに
振り回されたほうが楽しいかもしれませんね(笑)
Q:「安寿と厨子王」がテーマだそうですが?
A:今回、「夜会」というものを
自分に引きつけようと強く思ったんですよ。
自分の価値観みたいなものを掘り下げてゆくと、
こういうものに当たっちゃうんですね。
中島丸出し(笑)。
あのお話は子供の頃から何度読み返しても
「え、何で」と思うことがたくさんあって
ずっと気になっていたんです。
その年代なりの「何で」という疑問が
積み重なってきたんですよ。
前回は、『銀河鉄道の夜』に手をつけさせて頂きましたけど、
ホールも変わるし、
ちょっとは新しいことも出来るかもしれない
ということでこれにしました
Q:読み返すと新たな疑問が浮かんでくると?
A:おとぎ話というのは、そういうものじゃないかしら。
何十年、何百年と経つうちに
どうとでもお取り下さいというものになってゆく。
謎が一杯隠してある物語だと思うんですね。
解こうとするとその人の本質に関わってくる
恐ろしいお話かもしれませんよ。
きっと、こうは思わないという人も多いとは思うんですが、
日本人の考え方の闇、
みたいなものが沢山入っていると思いますね。
Q:中島みゆきさんが感じた「謎」とは?
A:一番最初にひっかかったのは、
お母さんがなんであんなに簡単に騙されるんだろうということ。
その次が、お姉さんと弟の気持ちですね。
“待ってるから”と言って弟を逃がして
水に飛び込んだお姉さんは美談で、
弟はお姉さんを犠牲にして生き延びたということを
ずっと引きずるわけですね。
弟にすれば“待ってる”と言うのは
嘘であり裏切りでもあるんですよ。
でも、それを裏切りと言ってしまっていいものなのかどうか。
そう考えると、善人とか悪人、という一言では括れない要素が
沢山あると言う気がしたんですね。
そういう歌もあります(笑)
Q:今回は「和」の雰囲気がでていますが?
A:今回は歌も台詞も七五調なんです 。不思議な感じよ(笑)。
リアルなようなリアルじゃないような。
でも、七五調というのは万葉の昔からですから、
日本人の発音の根本に関わっているものなんでしょうし、
韻が乗りやすいんじゃないでしょうか。
自分の中にあるものを突き詰めると七五寄りなんだと思いますよ。
Q:それは従来の「中島みゆきの詞」と違うのでは?
A:でもね、私、学生の頃、“七五の人”って呼ばれてたの。
外国語を2種類選択するときに英語と英詩にしたんですね。
英詩を訳する時に、
普通の散文や会話文同じようなと日本語にするのが嫌だったのね。
英詩を“和”で表現するとしたら何だろうと思って
七五で訳したんですよ。
そしたら全員爆笑なさいましたけど、
次の回から先生に
“七五の人、今日はやってくれないのか”って(笑)。
高校の音楽の時間に自分で書いた曲を提出しなさいっていう時も
七五で歌詞をつけましたからね。
それも爆笑されましたけど。
それを今に引きずり込んで行くとそこにはまってゆくんですね。
安寿と厨子王が、私をそこに引き戻しましたね。
ただ、台詞もそうですから、
役者さんたちはイントネーションとか、どこで切るのかとか、
大変に戸惑っていらっしゃいました(笑)
Q:「安寿と厨子王」といえば、「安寿こいしや、ほうやれほ」ですが?
A:曲にしました(笑)。
‘ほうやれほ’というのは、
日本の民謡や小唄・端唄に多くある言葉ですから、
この歌限定じゃないんですよね。
いかようにも出来るんです。
そういうことを調べていくと、
私って日本人だなあと思っちゃいましたね
Q:タイトルの「今晩屋」というのは?
A:最初に浮かんだのが、そういう歌もあるんですけど
“夜いらんかいね”だったんですね。
そこから引っ張られていった。
安寿さんと厨子王さんもそうでしょうけど、
もしあの一晩があったなら、と思っている人は多いと思うんです。
そういう方に、夜をお売りしたいなと。
春を売るんじゃないのよ(笑)。
でも、人間としての本質的なセンチメンタルの
究極じゃないでしょうか。
安寿も厨子王も千年以上も繰り返し
くるしんできたんでしょうから。
みんなもう苦しまなくていいよ、
と最後に分かってもらえればという物語ですからね。
安らかに成仏して
グッズを買ってお帰りいただければと思います(笑)
Q:以前、「理想とするのは大衆演劇」とおっしゃっていましたが?
A:大衆演劇と言った時に想定したのは、
演劇論で語られて、優劣をつけられるというところは
目指していないということでしょう。
そういうことをありがたいと思ったりするよりも、
今、面白ければいいじゃんというか。
やんややんやという。
演劇論として何が高尚か、
みたいなところには居たくないということで言ったんでしょうね。
Q:今後の夜会も「大衆演劇」を目指すということですか?
A:そうなって行ければと思いますね。
それこそ仕事場やお宅とかで色々大変なことがある方たちに
お金を払っていただいてる訳ですし。
コンサートでも言いましたけど、
ちょっとの間、荷物を降ろして深呼吸してもらえれば
それで良いと思うんです。
それに対して論じられるのは人様の自由ですけど、
これだけのことをやってるんだからすごいのよ、
みたいな論は必要ないということでしょうか。
大阪の方たちが使う、
“おもろうてやがて哀しき”、ですか、
ああいうことで良いんだと思いますね。
ただ、やればやるほど答えは出ませんけど。
今回も全部覚えるの難儀よう(笑)
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