記事概要

  基本データ

記事名 中島みゆき
日付 2008年12月号 出典 OASiS
ページ数 1 印刷 モノクロ
インタビュアー・対談者 田家秀樹 写真 2
備考 インタビュー記事。中島みゆきの夜会公演「夜会vol.15 〜夜物語〜『元祖・今晩屋』」について「安寿と厨子王」を題材に取り上げたことなどについて答えている。
読売新聞(11月20日付)毎日新聞(11月27日付)ぴあ(12月18日号)
同一のインタビュー、それぞれに若干の相違点がある。

   言及されている内容

言及されている曲・アルバム 「ほうやれほ」
言及されている具体的活動 夜会vol.15 〜夜物語〜『元祖・今晩屋』 
言及されている人物 森鴎外(「山椒大夫」(安寿と厨子王))
創作活動について 夜会 言葉とコミュニケーション
私生活について 高校以前の思い出
その他

   想定される復元されたインタビューの内容
Q:15回目を迎えた今回の夜会は?

A:気分も新たに、というところでしょうか。
 15回という区切りというわけじゃないんですけど、
 会場も変わることですし
 内容も真正面から“和”ですからね。
 元々「夜会」は非常にジャンルが分からないところで
 始まってるんですが、今回、音楽劇に立ち返ろうと。
 台詞と台詞の合間に曲を入れ込んでゆくというよりは
 曲から曲へ、歌詞で繋いでゆくという形なんですね。
 音楽の中にストーリーが全部入っている。
 方向としてはミュージカルというよりオペラでしょうね。
 だもんですから、今回は、曲、多いよ(笑)
 
 今回、普段使わない言葉が沢山入っているんで、
 1回ご覧になっただけじゃ
 聞き取れないところもあるかもしれませんが、
 曲のアップダウンも激しいし、
 ジェットコースタームービーみたいに
 振り回されたほうが楽しいかもしれませんね(笑)

Q:「安寿と厨子王」がテーマだそうですが?

A:今回、「夜会」というものを
 自分に引きつけようと強く思ったんですよ。
 自分の価値観みたいなものを掘り下げてゆくと、
 こういうものに当たっちゃうんですね。
 中島丸出し(笑)。
  
 あのお話は子供の頃から何度読み返しても
 「え、何で」と思うことがたくさんあって
 ずっと気になっていたんです。
 その年代なりの「何で」という疑問が
 積み重なってきたんですよ。
  
 前回は、『銀河鉄道の夜』に手をつけさせて頂きましたけど、
 ホールも変わるし、
 ちょっとは新しいことも出来るかもしれない
 ということでこれにしました

Q:読み返すと新たな疑問が浮かんでくると?


A:おとぎ話というのは、そういうものじゃないかしら。
 何十年、何百年と経つうちに
 どうとでもお取り下さいというものになってゆく。
 謎が一杯隠してある物語だと思うんですね。
 解こうとするとその人の本質に関わってくる
 恐ろしいお話かもしれませんよ。
 
 きっと、こうは思わないという人も多いとは思うんですが、
 日本人の考え方の闇、
 みたいなものが沢山入っていると思いますね。

Q:中島みゆきさんが感じた「謎」とは?

A:一番最初にひっかかったのは、
 お母さんがなんであんなに簡単に騙されるんだろうということ。
 その次が、お姉さんと弟の気持ちですね。
 “待ってるから”と言って弟を逃がして
 水に飛び込んだお姉さんは美談で、
 弟はお姉さんを犠牲にして生き延びたということを
 ずっと引きずるわけですね。
 弟にすれば“待ってる”と言うのは
 嘘であり裏切りでもあるんですよ。
 でも、それを裏切りと言ってしまっていいものなのかどうか。
 そう考えると、善人とか悪人、という一言では括れない要素が
 沢山あると言う気がしたんですね。
 そういう歌もあります(笑)

Q:今回は「和」の雰囲気がでていますが?

A:今回は歌も台詞も七五調なんです 。不思議な感じよ(笑)。
 リアルなようなリアルじゃないような。
 でも、七五調というのは万葉の昔からですから、
 日本人の発音の根本に関わっているものなんでしょうし、
 韻が乗りやすいんじゃないでしょうか。
 自分の中にあるものを突き詰めると七五寄りなんだと思いますよ。

Q:それは従来の「中島みゆきの詞」と違うのでは?


A:でもね、私、学生の頃、“七五の人”って呼ばれてたの。
 外国語を2種類選択するときに英語と英詩にしたんですね。
 英詩を訳する時に、
 普通の散文や会話文同じようなと日本語にするのが嫌だったのね。
 英詩を“和”で表現するとしたら何だろうと思って
 七五で訳したんですよ。
 そしたら全員爆笑なさいましたけど、
 次の回から先生に
 “七五の人、今日はやってくれないのか”って(笑)。
 
 高校の音楽の時間に自分で書いた曲を提出しなさいっていう時も
 七五で歌詞をつけましたからね。
 それも爆笑されましたけど。
 それを今に引きずり込んで行くとそこにはまってゆくんですね。
 安寿と厨子王が、私をそこに引き戻しましたね。
 ただ、台詞もそうですから、
 役者さんたちはイントネーションとか、どこで切るのかとか、
 大変に戸惑っていらっしゃいました(笑)

Q:「安寿と厨子王」といえば、「安寿こいしや、ほうやれほ」ですが?

A:曲にしました(笑)。
 ‘ほうやれほ’というのは、
 日本の民謡や小唄・端唄に多くある言葉ですから、
 この歌限定じゃないんですよね。
 いかようにも出来るんです。
 そういうことを調べていくと、
 私って日本人だなあと思っちゃいましたね

Q:タイトルの「今晩屋」というのは?


A:最初に浮かんだのが、そういう歌もあるんですけど
 “夜いらんかいね”だったんですね。
 そこから引っ張られていった。
 安寿さんと厨子王さんもそうでしょうけど、
 もしあの一晩があったなら、と思っている人は多いと思うんです。
 そういう方に、夜をお売りしたいなと。
 春を売るんじゃないのよ(笑)。
 でも、人間としての本質的なセンチメンタルの
 究極じゃないでしょうか。
 安寿も厨子王も千年以上も繰り返し
 くるしんできたんでしょうから。
 みんなもう苦しまなくていいよ、
 と最後に分かってもらえればという物語ですからね。
 安らかに成仏して
 グッズを買ってお帰りいただければと思います(笑)

Q:以前、「理想とするのは大衆演劇」とおっしゃっていましたが?

A:大衆演劇と言った時に想定したのは、
 演劇論で語られて、優劣をつけられるというところは
 目指していないということでしょう。
 そういうことをありがたいと思ったりするよりも、
 今、面白ければいいじゃんというか。
 やんややんやという。
 演劇論として何が高尚か、
 みたいなところには居たくないということで言ったんでしょうね。

Q:今後の夜会も「大衆演劇」を目指すということですか?

A:そうなって行ければと思いますね。
 それこそ仕事場やお宅とかで色々大変なことがある方たちに
 お金を払っていただいてる訳ですし。
 コンサートでも言いましたけど、
 ちょっとの間、荷物を降ろして深呼吸してもらえれば
 それで良いと思うんです。
 それに対して論じられるのは人様の自由ですけど、
 これだけのことをやってるんだからすごいのよ、
 みたいな論は必要ないということでしょうか。
 大阪の方たちが使う、
 “おもろうてやがて哀しき”、ですか、
 ああいうことで良いんだと思いますね。
 ただ、やればやるほど答えは出ませんけど。
 今回も全部覚えるの難儀よう(笑)